ヤマハ MT-03 ABS は、
- 水冷4ストロークDOHC4バルブ 直列2気筒
- 総排気量 320cm³
- 最高出力 31kW(42PS)/10,750rpm
- 最大トルク 30N・m(3.1kgf・m)/9,000rpm
- 車両重量 167kg
- シート高 780mm
- 燃料タンク容量 14L
というスペックを持つ、320ccクラスの“ちょうどいい”ハイパーネイキッドです。
見た目はMTシリーズらしいアグレッシブな顔つきですが、中身は
「街乗り・ツーリング・ワインディングを全部1台でこなしたい人向けの、扱いやすいロードスポーツ」
というキャラクター。
この記事では、
- MT-03の正確なスペック
- 良いところ/気になるところ
- 兄弟車のMT-25・YZF-R3との違い
- どんな人に向いているか
を、なるべく分かりやすくまとめます。
MT-03の主要スペック
車体サイズ・重量
- 認定型式:8BL-RH21J
- 全長:2,090mm
- 全幅:755mm
- 全高:1,070mm
- ホイールベース:1,380mm
- 最低地上高:160mm
- シート高:780mm
- 車両重量:167kg
- 乗車定員:2名
エンジン・トランスミッション
- エンジン形式:水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ・直列2気筒
- 総排気量:320cm³
- 内径 × 行程:68.0mm × 44.1mm
- 圧縮比:11.2:1
- 最高出力:31kW(42PS)/10,750rpm
- 最大トルク:30N・m(3.1kgf・m)/9,000rpm
- 燃料供給方式:フューエルインジェクション
- 始動方式:セルフ式
- 潤滑方式:ウェットサンプ
- 変速機:常時噛合式6速リターン
足まわり・ブレーキ・タイヤ
- フレーム形式:ダイヤモンドフレーム
- フロントサスペンション:倒立テレスコピック(φ37mm)
- リアサスペンション:リンク式モノクロス
- フロントブレーキ:油圧シングルディスク+ABS
- リアブレーキ:油圧シングルディスク+ABS
- タイヤサイズ:
- 前:110/70R17M/C
- 後:140/70R17M/C
燃費(届出値)
- 定地燃費値:41.6km/L(60km/h・2名乗車時)
- WMTCモード値:25.4km/L(クラス3・サブクラス3-2・1名乗車時)
MT-03の良いところ(メリット)
① 320cc並列2気筒の“ちょうどいいパワー感”
YZF-R3と共通のエンジンをベースにした320cm³ツインは、
- 42PS/10,750rpm
- 30N・m/9,000rpm
というスペック。
数字だけ見ると高回転型ですが、
- 低〜中回転域でも極端にスカスカではなく、街中でも扱いやすい
- 6,000〜8,000rpmあたりを使って走ると、一般道では十分以上に速い
- もう少し元気に走りたいときは、1〜2速落として高回転まで回せばスポーティな加速が楽しめる
「常に全開じゃないと走らないピーキーさはなく、
でも回せばしっかりスポーツする」
という、普段使いと楽しさのバランスが良いエンジンです。
② 167kg + コンパクトな車体で取り回しラク
- 車両重量:167kg
- ホイールベース:1,380mm
ミドルクラスとしては軽めで、サイズもコンパクト。
- 押し引きで「大型ほどの圧」は感じにくい
- 細い路地でのUターンや駐輪場での取り回しも怖くない
- ワインディングでも軽快に切り返せる
初めての2気筒ロードスポーツとしても現実的な重さとサイズ感です。
③ ハンドル位置が高めで、ポジションが楽
MTシリーズらしく、
- ネイキッドならではのアップライト寄りポジション
- セパハンではなくバーハンドルで、上体はやや前傾〜中立
- ステップ位置もスポーツ寄りだが極端ではない
というセットアップになっています。
- 通勤・街乗りがメインでもそこまでツラくない
- 長めのツーリングでも、スーパースポーツほど手首や腰が痛くなりにくい
- それでいて、ワインディングではしっかり体重移動して遊べる
「ラクさ」と「スポーツ性」のバランスが程よいポジションです。
④ 倒立フォーク+ラジアルタイヤで足まわりも十分
最新のMT-03は、
- φ37mm倒立フロントフォーク
- リア:リンク式モノクロスサス
- 前後ラジアルタイヤ(110/70R17・140/70R17)
と、クラスとしてはしっかりした足まわりを装備。
- フロントの接地感がつかみやすく、ブレーキング〜ターンインが安定
- ワインディングでのバンクも安心して楽しめる
- ラジアルタイヤのおかげで、グリップ感やしっとりした乗り味も確保
「排気量は控えめでも、足まわりはきちんとスポーツ」
という、MTシリーズらしい走りの素性になっています。
⑤ 燃費良好で、ツーリング向きの航続距離
- 定地燃費:41.6km/L(60km/h・2名)
- WMTCモード値:25.4km/L(クラス3-2・1名)
- タンク容量:14L
公表値ベースでも、条件が良ければ300km前後の航続距離が狙える数字です(実走は走り方次第)。
- 給油の頻度が減ってツーリングが楽
- ガソリン代も抑えやすい
「通勤もツーリングも1台でやりたい」ライダーに向いた燃費性能です。
MT-03の気になるところ(デメリット)
① シート高780mmは“誰でもベタ足”ではない
- シート高:780mm
シート周りの絞り込みはされていますが、
- 身長によっては「つま先〜片足べったり」くらいの足つきになる
- レブル系のロースタイルほどの安心感はない
足つきに不安がある人は、実車でのまたがり必須です。
② ネイキッドなので高速巡航では風をしっかり受ける
- カウルレスでスクリーンも小さめ
そのため、
- 高速道路を長時間走ると、上半身への風圧で疲れやすい
- 100km/h巡航を続けるようなロングツーリングでは、ウインドシールドの追加がほしくなる
高速メインで長距離を走るなら、
同じエンジンを使うYZF-R3や、カウル付きツアラーを検討するのもアリです。
③ 400クラスやリッターネイキッドほどの“暴力的な加速”はない
- 320cc・42PSという数字は、普通に走るには十分
- ただし、排気量の大きいミドル〜リッターネイキッドと比べると、やはり加速力は劣る
「高速道路で常に余裕を持って130km/hオーバー巡航したい」
「リッターバイク並みのパンチが欲しい」
といった要求だと、排気量の壁は越えられません。
MT-03は他のモデルとどう違う?
1. MT-03 vs MT-25
基本構成は共通で、排気量違いの兄弟モデルです。
共通点
- フレーム・足まわり・デザイン
- ポジションや車体サイズ(2,090×755×1,070mm/WB1,380mm)
違い(主にエンジン)
- MT-03:320cm³並列2気筒・42PS/30N・m
- MT-25:249cm³並列2気筒・およそ35PSクラスの出力(別記事で詳しく)
ざっくり方向性としては、
- 高速道路や登り坂、タンデムツーリングまで視野に入れるなら → MT-03
- 保険料や税金も含めて、維持費を少しでも抑えたい → MT-25
という住み分けになります。
2. MT-03 vs YZF-R3
同じエンジン・基本構成を持つフルカウルスポーツが YZF-R3。
- エンジン:320cm³並列2気筒・42PS/30N・mで共通
- YZF-R3はセパハン+フルカウルで、ポジションがスポーツ寄り
- MT-03はバーハンドルのネイキッドで、アップライト寄りのポジション
選び方のイメージ
- 「見た目も含めてスポーツバイクがいい。サーキットも走りたい」 → YZF-R3
- 「普段の街乗り〜ツーリングがメイン。ポジションは楽な方がいい」 → MT-03
3. MT-03 vs 400クラスネイキッド
- Z400やCB400SF(生産終了車)と比べると、排気量は小さい分パワーは控えめ
- その代わり、車重が軽く、維持費も有利
「いきなり400・大型まではいらないけど、原二や250から一歩ステップアップしたい」
というライダーには、320ccという排気量はちょうどいい中間と言えます。
MT-03は初心者にも向いている?
向いているポイント
- 167kgの軽めな車重で、取り回しがしやすい
- ネイキッドで視界が広く、操作も分かりやすい
- 2気筒320ccで、パワーが極端にじゃじゃ馬ではない
- ABS・倒立フォーク・ラジアルタイヤなど、安心感と走りを両立
「中免取りたてで、最初の1台にネイキッドスポーツが欲しい」
という人には、かなり現実的な選択肢です。
注意したいポイント
- シート高780mmで、小柄なライダーには足つきがシビアな場合も
- 高速メインのロングツーリングでは風圧で疲れやすい
- 最高出力や高速域の余裕は、リッタークラスや大型SSには及ばない
このあたりが気になる人は、実車での足つき確認や他クラスとの比較がおすすめです。
MT-03で後悔しやすい人/満足しやすい人
後悔しやすい人
- シートがとにかく低くないと不安
- 高速道路を長距離走ることが多く、強い防風性を求める
- 「どうせ買うなら、最初からリッター並みの加速が欲しい」
- 4気筒の高回転サウンドにこだわりがある
こういうライダーは、クルーザー系・フルカウルツアラー・4気筒モデルの方が満足度が高いかもしれません。
満足しやすい人
- 通勤・街乗り・ツーリング・ワインディングを1台でこなしたい
- ネイキッドの気軽さと、スポーツ走行の楽しさを両立したい
- 250より少し余裕が欲しいけど、大型まではいらない
- MTシリーズのデザインが好きで、“MTワールド”に入りたい
そんな人にとって、MT-03は
「普段着で乗れるハイパーネイキッド」
として、かなりちょうどいい1台になってくれるはずです。


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